3月22日に開催された経産省「第5回 あるべき卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の実現に向けた実務検討作業部会」での議論から、時間前市場のあり方について少し述べたいと思います。
まずスポット市場と時間前市場における約定量について、直近の3か月間の対比で時間前はスポットの1.5~1.8%程度でした(JEPX ウェブサイトより抜粋し当社作成)。
約定量(kWh) |
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スポット市場 |
時間前 |
割合 |
2023年1月 |
31,646,058,350 |
548,013,400 |
1.7% |
2023年2月 |
28,247,012,950 |
412,955,750 |
1.5% |
2023年3月 |
25,795,594,250 |
453,188,200 |
1.8% |
上記の作業部会において、各事業者において、時間前市場へのニーズとして、大きいと考えられるものとして以下が挙げられています。
・再エネの出力変動に伴う調整のための売買に最も大きなニーズがあるか
・小売電気事業者が需要変動に応じたポジション調整のために行う売買
・変動性再エネ以外の発電事業者による電源脱落時等の買い、経済差し替えのための買い、前日同時市場で約定しなかった電源の売り
再エネの市場統合に向けた市場環境の整備の一環として、時間前市場の流動性の向上について議論がなされており、三次調整力②の時間前市場への投入や時間前市場のシングルプライスオークション導入も議論されています。今後の再エネ大量導入を前提とすると、更なる時間前市場の流動性の向上に資する市場の仕組みが重要としています。
その一方で、流動性の向上を求めるだけでなく、時間前市場の流動性が向上すると非効率となる可能性があるとの懸念や、効率性の向上のために時間前市場においても前日同時市場のような仕組みを導入することも検討されています。
安定供給の確保を大前提として、流動性と効率性双方のバランスが取れた仕組みを検討することが重要です。
バランシンググループ(BG)などが予測誤差を調整する場として、時間前市場の流動性向上が必要です。時間前市場を活性化することで、市場参加者には需要予測の改善、リスクの低減、効率的な取引などの利点があると思われます。