今年4月から始まる2024年度には、電力市場において注目すべき動きがあります。容量市場は2024年度から実需給期間に入り、期間中は小売電気事業者などが容量拠出金を負担することになります。需給調整市場においては二次調整力①と二次調整力②が追加で導入され、一次調整力についても調達が始まる見込み(広域調達については不明)です。これで需給調整市場の全商品が取り扱われることになります。因みに、発電側課金も始まる見込みです。

受給調整市場では、2021年度から始まっていた三次②調整力、2022年度からは三次①調整力において、価格や調達量に問題が発生していることが指摘されています。取引開始以降、三次①及び②では、募集量に対し応札量が不足する傾向が続いており、応札された調整力が全量落札されることも少なくありません。2022年夏季には約定価格が高騰することもありました。

資源エネルギー庁は、上記のことは他の商品(一次調整力、二次調整力)でも同様に課題となり得ることを踏まえ、2024年度の取引が開始するまでに改めて、効率的な調達となっているかを検証することが必要としており、主に価格規律と調整力調達量の観点から対応が検討されています。安定供給等の観点なども考慮し、より効率的な電力調達が可能になることを期待したいと思います。

2023年7月27日の電力・ガス取引監視等委員会(第87回制度設計専門会合)において、2017年から続いてきたグロスビディングを休止する方針が承認され、この10月から休止されました。その背景には何があったのでしょうか。

グロスビディングとは、余剰電力を中心に行われていた卸電力取引所での取引(ネットビディング)に加え、旧一電など大手電力の社内やグループ内取引の一部についても卸電力取引所を介して売買する取り組みです。①市場の流動性向上、②価格変動の抑制、及び③取引の透明性向上の効果を期待して導入されました。

そのうち①市場の流動性向上について、卸電力取引所における取引量は、2017年4月の時点で電力需要の3.5%だったものが2018年4月には17.1%に、2023年3月には39.9%まで増えています。②価格変動の抑制についても、同監視委員会はスポット市場の価格感応度を評価しており、2016年8月に売り追加時が▲0.91円、買い追加時が+1.14円だったものが、2021年8月には売り追加時▲0.41円、買い追加時+0.40円と着実に低下したと報告しています。

指摘されるのは③透明性の向上です。高値での買い戻しが許されてきた経緯があることから、市場価格の形成に影響する可能性が指摘されていますが、行政側は価格中立(価格に影響を及ぼさない)と説明するなど議論は分かれています。

2020年の価格高騰時は燃料不足、2022年はウクライナ侵攻などの影響による天然ガスや石炭などの燃料価格の高騰に起因したもので、大手電力が電力需要を読み違えて発電部門が十分な燃料調達ができなかったことで発電量不足になりました。燃料制約が引き起こす問題は、要するに売り玉不足です。大手電力はグロスビディングで売り投入した分は全量を確実に買い戻すためシステム上の上限である999円/kWhで買い札を入れる、いわゆる絶対買いをしたとされます。売り玉不足の状況で大量の絶対買いが横行すると玉切れ付近で供給曲線が急激に上昇し、本来あるべき均衡価格からかけ離れた高騰を招く可能性があります。

今後の電力市場の動向をよく見ていく必要がありそうです、また市場運営の面からもこれまでのグロスビディングの影響をしっかりと検証してもらいたいと思います。

今年度2回目のFITおよびFIP入札結果が公表されました(出力500kW以上のFIP太陽光発電設備 及び 出力250kW 以上500kW未満 のFIT太陽光発電設備)。

<入札の概要>
・募集容量:110.88779MW
・供給価格上限額:9.43円/kWh

<入札の結果>
・入札件数の合計:55件
・入札された再生可能エネルギー発電設備の出力の合計:69.0742 MW

<落札の結果>
・落札件数の合計:55件(内、FIP:43件、FIT:12件)
・落札された再生可能エネルギー発電設備の出力の合計:69.0742 MW
・最低落札価格:8.95円/kWh
・加重平均落札価格:9.30円/kWh
・最高落札価格:9.43円/kWh

前回第16回の入札容量が募集容量(105MW)を超えたため、規定により今回の募集容量は微増されましたが、入札が募集枠を埋めるに至らず、結果として入札案件は全て落札となりました。
前回と異なるのは、FIPの入札件数が13件から43件に増えており、特高が15MWの1件のみであったことです。前回は90MWの落札案件が入札容量の太宗を占めていましたが、今回は高圧案件が分散して落札された模様です。
今後も募集価格は更に低廉化される見込みですが、今回の最低入札価格は8.95円に達していることから今後も一部の事業者においては入札動機は継続するものと推測されます。
また、FIPにおいては、運用開始時期によって受け取れるプレミアムが大きく変わる可能性があるので、この辺りの事業計画や具体的なスキームをどのように策定しているのか大変興味があります。

今年度のこれまでの太陽光発電における市況について、東京エリアにおける春季の電力市場価格は低価格で落ち着いていたのですが、夏場に掛けてやや高値傾向が継続しています。日中帯においても極端な価格下落傾向は見られず、今回の入札価格を十分に上回る水準となっています。とは言え、4月から8月までの加重平均価格は手元の計算では9円程度です。これが九州となると、4月から7月までで3円程度と東高西低が顕在化しています(因みに北海道の4月から8月の加重平均価格は11円程度です)。もちろん、プレミアムが支払われるので、これがそのまま事業者の収入に直結するわけではないのですが収益の予見性は地域によっても大きく変動するため、かなり難しいというのが率直な感想です。

このように再エネを取り巻く環境はよりチャレンジングなものになってきていますが、ステークホルダーの方々とともにこれを克服すべく挑んで行きたいと思います。

今夏の到来を前に経済産業省資源エネルギー庁は6月29日、10年に1度の厳しい暑さを想定した電力需要に対し、全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できるとの見通しを発表しました。しかしながら東京エリアでは、追加的な供給力対策を講じてもなお7月の予備率は3.1%と非常に厳しく、8月が4.8%、9月が5.3%という見立てでした。

 東京では猛暑日の年間最多記録更新を記録するなど全国的に厳しい暑さとなっていますが、OCCTOの電力需給モニタリング結果などをみても、これまでのところ需給が逼迫する状況には至っていないようです。6月から電力価格が値上げされたところですが、節電への協力の呼びかけ(東京)や、予備電源の確保や原燃料の調達管理強化など、政府による2023年度夏季の電力需給対策が一定の成果をあげているとみるべきなのでしょうか。

 最大電力実績(東京エリア)

 

 

平均最大電力実績(万Kw)

平均ピーク時供給力(万Kw)

平均使用率実績

使用率ピーク

2023/7/2

2023/7/8

4,243

5,322

79.7%

7/7 13:00
88%

2023/7/9

2023/7/15

4,615

5,417

85.2%

7/12 14:00
91%

2023/7/16

2023/7/22

4,710

5,517

85.4%

7/19 13:00
93%

2023/7/23

2023/7/29

4,925

5,886

83.7%

7/28 13:00
91%

2023/7/30

2023/8/5

5,013

5,907

84.9%

8/4 13:00
94%

2023/8/6

2023/8/12

4,637

5,449

85.1%

8/9 11:00
92%

2023/8/13

2023/8/19

4,352

5,146

84.6%

8/17 11:00
91%

出典:東京電力パワーグリッド公表資料をもとに弊社集計

 少し気がかりな状況もあります。日本の電力会社が備蓄する液化天然ガス(LNG)が8月20日時点で181万トンと、2022年4月以来の最低水準にまで減少していることが報じられました(https://arab.news/53gnm)。今年5月末時点では271万トンだったものが約2/3に減少しています。この備蓄の減少は、夏の猛暑でエアコンの電力需要の増加と、最近の台風の影響で一部の貨物の配達が遅延していることが反映しているとみられます。

 現在も円安は進行し、ガソリンの小売価格は史上最高値に迫る水準にあります。今冬に向けても政府には引き続き、電力市場の安定とエネルギーの安定供給に向けた対策を着実に実施してもらいたいと思います。

今年度1回目のFIP入札結果が公表されました(出力500kW以上のFIP太陽光発電設備 及び 出力250kW 以上500kW未満 のFIT太陽光発電設備)。

<入札の概要>

・募集容量:105MW

・供給価格上限額:9.50円/kWh

<入札の結果>

・入札件数の合計:35件

・入札された再生可能エネルギー発電設備の出力の合計:119,719.8 kW

<落札の結果>

・落札件数の合計:20件

・落札された再生可能エネルギー発電設備の出力の合計:105,000.0kW

・最低落札価格:9.00円/kWh

・加重平均落札価格:9.34円/kWh

・最高落札価格:9.49円/kWh

今回はそもそも募集容量が105MWと昨年度の175MWから大幅に縮小された状況でしたが、入札容量(約120MW)が募集容量を超えたのはFIP制度創設より初めてのことです。ただし、落札発電所の1つが約90MWなので業界全体がFIPに注目し始めたとは言い難いように思います。

また、円安・資源高の状況下で9.5円/kWh以下で果たして採算が取れるのか、個人的にはいささか疑問は残ります。市場価格が比較的高値で推移している東京エリアでも、今年度(3か月間のみですが)の太陽光の加重平均価格は7円/kWhを下回る水準ですので、単純な市場への売電だけでなく、PPAを組み合わせた需要家への直接・間接供給を志向している可能性があります。

一方で、FITからFIPへ移行する電源も徐々に増える傾向にあります。6月1日時点でFITからFIPに移行した電源74件の内訳は、太陽光45件、バイオマス20件、風力9件となっています。FIPは環境価値が当該発電所の帰属するため、電力のみならず環境価値を欲するグローバル企業に対しPPAを締結する動きが活発化しているようです。

*バイオマスはバイオマス燃料価格の高騰に伴い、固定価格買取よりも市場価格に連動させたほうが有利という判断も働いたようです

太陽光においては非FIT/非FIPの電源開発も増加しており、再エネ事業者の動向が多様化するなかで、アグリゲータとしてもこれらに柔軟に対応できるような体制やシステムを構築する必要性を実感しています。

再エネに限らず、皆様からのご意見やご要望を頂ければ、我々にとって非常に有用な情報となりうるのでお気付きの点がございましたらお気軽にお申し出頂ければ幸いです。

『再エネの出力制御の現状』

2018年に九州で初めて実施された再エネの出力制御は、日本では特に太陽光発電の導入拡大とともに全国へ拡大しています。昨年来の電気料金高騰に伴う節約、節電要請などの影響による電力需要の減少もあり、出力制御量は増加傾向にあります。春秋の低需要期を中心に九州エリアでのみ実施されていましたが昨年以降、沖縄を含む他エリアに拡大し、未実施なのは東京エリアのみとなっています。その東京エリアでも、出力制御の実施はもう時間の問題とみられます。

全国の再エネの出力制御量の合計も増加傾向にあり、2018年度は約1億kWh(九州のみ)であったものが、2022年度は全国で約6億kWhに増加しました。九州エリアでは2022年度の実績で、最小需要718万kWに対し、再エネの導入量は1,216万kWと約1.7倍になっています。また北海道、東北、中部、中国、四国の5つのエリアにおいて、太陽光・風力の設備容量が軽負荷期の需要を上回っているそうです。

海外の出力制御率(太陽光と風力)との比較をみると、日本(九州)が3.0%であるのに対してイタリア1.1%、ドイツ3.3%、アイルランドが7.4%、またデンマークは8.2%などとなっており、出力制御を行うことは国際的に一般的という論調で語られています。但し、日本は制御対象の殆どが太陽光ですがドイツは約2割、デンマークは約5割が風力です。(出典:経産省 総合エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会/再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会第52回配布資料3、2023年6月21日)

再エネの出力制御は、社会的コスト全体を抑制しつつ、再エネの最大限の導入を進めるために必要な措置です。再エネの導入にあわせて系統増強等を行うと社会的コストが増大する面はあります。しかし出力制御が発生しないように再エネの導入を抑制するとなれば、本末転倒であり、発電費用ゼロの変動再エネの出力を制御することはそれ自体が社会的な損失で、もったいないことだと思います。

社会的コスト全体を抑制しつつ再エネの最大限の導入を進める上で、再エネの出力制御は必要である一方、必要最低限となるよう制度面を含む環境整備を進め、需給の変動に応じて適切に行われる必要があります。また効率性の観点からも、市場メカニズムをできる限り活用することなども必要です。

行政は、年内を目途に再エネの出力制御低減に向けた新たな対策パッケージを取りまとめる予定とのことです。関心を持って、みていきたいと思います。

需給逼迫時に適用される「補正インバランス料金」の見直しについての議論が始まりました。当初、上限単価は2023年度までは200円/kWh、来年度からは600円/kWhが予定されていましたが、2024年度も上限200円/kWhに据え置く可能性があるようです。ただし、現時点で委員の意見が割れており、先行きは不透明な情勢です。

インバランス料金の上限を巡っては、2021年1月上旬に発生した異常な市場高騰に対応するため、その直後(2021年1月17日)から200円/kWh、同年7月から一定条件の下で80円/kWhに抑えられてきました。

インバランス料金の上限値は、市場価格の形成に大きな影響を与え(需給逼迫時は上限値付近の買い札がおおくなるため)、一般的に上限値の抑制は小売電気事業者に安心感を与え異常な市場高騰を未然に防ぐ効果が期待できます(それでも、多くの小売電気事業者が清算、撤退、新規申込受付停止に至るなど混乱は続いていますが)。

一方で、発電事業者は価格スパイクの恩恵を十分受けられず、発電設備の新規投資に悪影響を及ぼす可能性があります。同様に、DR(デマンドレスポンス)なども価格高騰の恩恵が少なくなるため、市場規模が小さくなる恐れがあります。

我々、アグリゲータの立場としては、インバランス負担の軽減が命題そのものと言っても過言ではないので、上限がある程度抑制されることは歓迎したいと考えています。ただし、行き過ぎた抑制は、市場を歪め、参加者の行動に影響を及ぼすため好ましいとは思えません。難題ですが、その時々で適正な価格を設定してもらいたいと思います。

一例として、(あくまで推測の域を出ませんが)昨今0.01円/kWhのコマが頻発しています。これは買い入札の動向の変化も影響しているのでは?と一部で言われています。0.01円/kWhのコマではインバランス料金が「0」となるため、意図的に買い入札を抑えることで0.01円のコマが実受給以上に多くなっている(つまり、小売電気事業者が必要な供給力を確保していない)可能性を指摘する関係者もいます。

制度設計時には想定していない問題が、最近の電力業界では散見されておりますので紆余曲折があるにせよ、政府や関係省庁には公平で透明性のある市場形成に向けた努力をお願いしたいと思います。

3月22日に開催された経産省「第5回 あるべき卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の実現に向けた実務検討作業部会」での議論から、時間前市場のあり方について少し述べたいと思います。

まずスポット市場と時間前市場における約定量について、直近の3か月間の対比で時間前はスポットの1.5~1.8%程度でした(JEPX ウェブサイトより抜粋し当社作成)。

約定量(kWh)

 

スポット市場

時間前

割合

2023年1月

31,646,058,350

548,013,400

1.7%

2023年2月

28,247,012,950

412,955,750

1.5%

2023年3月

25,795,594,250

453,188,200

1.8%

 

上記の作業部会において、各事業者において、時間前市場へのニーズとして、大きいと考えられるものとして以下が挙げられています。

・再エネの出力変動に伴う調整のための売買に最も大きなニーズがあるか

・小売電気事業者が需要変動に応じたポジション調整のために行う売買

・変動性再エネ以外の発電事業者による電源脱落時等の買い、経済差し替えのための買い、前日同時市場で約定しなかった電源の売り

 

再エネの市場統合に向けた市場環境の整備の一環として、時間前市場の流動性の向上について議論がなされており、三次調整力②の時間前市場への投入や時間前市場のシングルプライスオークション導入も議論されています。今後の再エネ大量導入を前提とすると、更なる時間前市場の流動性の向上に資する市場の仕組みが重要としています。

その一方で、流動性の向上を求めるだけでなく、時間前市場の流動性が向上すると非効率となる可能性があるとの懸念や、効率性の向上のために時間前市場においても前日同時市場のような仕組みを導入することも検討されています。

安定供給の確保を大前提として、流動性と効率性双方のバランスが取れた仕組みを検討することが重要です。

バランシンググループ(BG)などが予測誤差を調整する場として、時間前市場の流動性向上が必要です。時間前市場を活性化することで、市場参加者には需要予測の改善、リスクの低減、効率的な取引などの利点があると思われます。

今回は幾つかのトピックについて情報共有させて頂きます。

1.2022年度第4回 FIT・FIP入札結果
去る3月10日に公表された今年度最後のFIT・FIPの入札結果は以下の通りでした。
これまで以上に低調な結果となりましたが、来年度も入札機会毎の上限価格は低減されていくため、
当面入札が活性化する可能性は低いかと思われます。
1) FIT
 募集容量:50MW
 落札容量:15.8362MW(25件)
 落札価格(加重平均):9.59円/kWh
2) FIP
 募集容量:175MW
 落札容量:16.2045MW(9件)
 落札価格(加重平均):9.56円/kWh

2.23年度の再エネ賦課金
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223770S3A320C2000000/
今年度は日中帯においても市場価格が高騰傾向にあり、FIT電源の市場収入が膨らんだため制度導入以来
初めて再エネ賦課金が引き下げられます(本日、1.4円/kWhと公表されました)。
2円/kWh強の引き下げというのは決して小さくないと思うのですが、肝心の電気・ガス料金は補助金で
幾分緩和されているとはいえ当面高値で推移しそうなので引き下げによる影響は限定的でしょうか。

3.太陽光・風力の出力制御
先日のエネ庁系統ワーキンググループにおいて、31年度時点の太陽光・風力の導入量を想定した出力制御の
見通しが各一般送配電事業者より公表されました。これによれば、対策を講じない場合、北海道と東北では
50%を超える出力制御率が見込まれる驚きの試算結果となっています(最下部参照)。
連系線を活用してもこのような高い出力制御率が偏在することが予見されていますので、系統増強以外で
何らかの追加対策が検討される可能性が高いのではないでしょうか。
例えば、現在の市場は0.01円/kWhが下限値ですが、ネガティブプライスの導入により余剰電力の積極的な
活用(上げDRやPower to Gas等)が期待されます。これらの技術・コスト面の克服や社会実装までの工程
および市場の設計変更に伴うシステム変更等を考慮すれば、時間的な猶予はごく限られているように思えます。
しかし、エネルギーミックス実現のため更なる再エネ導入に向けては不可避な課題ですので、国を挙げて
早期に取り組んでもらいたいと思います。

エリア:出力制御率
——————-
北海道:53.6%
東北 :54.2%
東京 : 3.4%
中部 : 2.8%
北陸 : 4.2%
関西 : 3.8%
中国 :25.5%
四国 : 2.8%
九州 :26.0%

振り返れば2年前の2021年1月、一時はインバランス料金上限(当時)の250円/kWhになるなどスパイク(価格の急激な跳ね上がり)が頻出し、昨年の2022年1月も80円/kWh程度の高騰が何度かありました。今年1月のJEPXスポット価格は、燃料価格高騰の影響を受けて価格の水準は高いものの、寒波襲来があっても目立ったスパイクもなく安定的でした。その背景には何があったのでしょうか。

2021年1月はその前年秋頃から燃料不足などにより価格が上昇していたところ、新型コロナウイルス感染症の影響もあり電力需要が抑えられる中、一部大手電力が冬場の燃料不足に陥り自社発電を抑制せざるを得なくなり、市場調達が増えたことなどがその原因とされました。この時、インバランス価格の上限価格の妥当性に議論が及び、ブロック入札やグロスビディングの問題などもクローズアップされました。

2022年1月は前年の反省から、追加供給力公募(kW公募)と追加電力量公募(kWh公募)など冬場の電源不足や燃料制約の回避策が導入されました。にもかかわらずコロナ禍からの需要回復傾向に合わせて燃料価格が上昇し、一部の大手電力が電力市場への入札価格(≒限界費用)にその時の国際燃料市場価格を反映させる動きが広がり、電力市場は燃料市場との連動性が強まりました。

そして昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻は世界的に燃料価格を上昇させ、燃料不足は世界中で電気料金の高騰をもたらしました。しかし欧州のLNGの備蓄が整備されると昨年秋頃からLNG価格は落ち着き、欧州では今冬が予想外の暖冬であったことも影響して今年1月のJEPXスポット価格は過去2年と異なり変動は小さく、安定的な値動きとなりました。

先月下旬に10年に1度という大寒波が襲来したにもかかわらず価格変動が小さかった理由の一つは、今冬に向けてLNGの輸入を早期に進めて貯蔵し、長期停止している電源の再稼働の準備を進めたことが挙げられます。もう一つは戦略的予備力の増強です。これはドイツなどが採用する容量メカニズムの1つのことで、日本では今回実施したkW公募とkWh公募(先述のとおり)が相当します。電気料金が上昇する局面で、大寒波襲来もあり全体的な需要が大きく減っていないにもかかわらず、相場に落ち着きをもたらしました。

また、太陽光発電などの再エネ電力の影響も小さくありません。今年1月に九州では平日でも0.01円/kWhに貼りつく時間帯がたびたびありました。発電設備のエネルギー変換にかかる限界費用が市場への売り単価になるので、電力市場はどの電源が限界電源になるかにより決まります。エリアや時間帯により電力市場は化石燃料から再エネ電源の限界費用への収れんが始まっているものとみられます。

電力市場には依然として不安定要素が多くあります。ウクライナ侵攻を背景とする想定外の事態による世界的な電気料金高騰も続いています。その一方で世界的にGX(グリーントランスフォーメーション)をより強く推進する動機となっており、燃料価格に左右されない再エネ電力が増えれば電力市場はより安定感を増していくものとみられる点も付記しておきたいと思います。(参照:日経エネルギーNext bit.ly/3IpG6cV)

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