お知らせ

日本版FIPの収益構造(3)

日本版FIPの収益構造(3)

今回は前々回で予告しておりました「FIP制度に移行することにより新たに発生する費用」について考察したいと思いますが、その前に1点、前々回で触れた環境価値の価格について補足させて頂きます。

 前々回では参照価格の算定に用いられる同価値は直近4回の平均価格となるが、実際の市場における売却(約定)単価が相違する場合、収益が変動する可能性があると述べました。この点について経産省に確認したところ、平均価格の具体的な算出方法(前々回の例では小数点第二位を四捨五入)は今後議論されるとのことで、収益の変動は最小限に抑えられる可能性があることをご認識頂ければと思います。

 さて、それでは以下より今回の本題に入ります。私たちの考えるところ、FIT制度に比べFIP制度における発電事業者の新たに発生するコスト負担は主に以下になるものと考えています。

  • インバランスコスト
  • 気象・発電量予測コスト
  • JEPX関連費用または相対契約コスト
  • OCCTOへの発電計画提出コスト
  • 出力制御(オンライン制御)対応
  • システム構築・運用コスト

 上記個々の項目について、検討したいと思います。

1)インバランス負担

エリア毎の30分毎計画発電量と実発電量が異なった場合、30分コマ毎に確定したインバランス単価にもとづいてペナルティを支払わなければなりません。特に風力や太陽光などの変動電源は発電量予測が難しく、これら発電事業者にとってインバランスを最小化することは大きなハードルとなるでしょう。また、昨冬においてはインバランス単価も高騰が生じましたが、このようなリスク負担も新たに発生することになります。

2)気象・発電量予測コスト

インバランス最小化のため、一般的に気象予測あるいは発電量予測会社の情報を利用することになると思われますが、ドイツでは単体ではなく複数の会社と契約し予測精度を高める工夫がされています。

3)JEPX関連費用または相対契約コスト

発電した電力は市場または相対で売却することになりますが、ここで発生するコストは以下になります。

・JEPX関連費用
入会金(10 万円)、信認金(100 万円)、年会費(50 万円)、その他預託金・売買手数料
また、30分毎の取引単位は500kWhになりますのでこれと実発電量との過不足についてもコストとして認識する必要があります。

 ・相対契約コスト
相手先探索、契約交渉・更新、不随する手続きコスト → 主に人的コスト

4)OCCTOへの発電計画提出コスト

発電量予測に基づいて発電量計画の提出が必要になります。また、インバランス回避のため時間前市場で新たに売買した際は、修正した計画を期限までに再提出しなければなりません。

5)出力制御(オンライン制御)対応

FIP電源(FITからの移行も含めて)は系統混雑時において送配電事業者による出力制御対象となるため、オンライン制御機能を具備する必要があります。

6)システム構築・運用コスト

上述の2)、3)、4)については人力でも対応可能ですが、発電所の規模や数によってはシステムを導入したほうがコスト面や正確性といった点で有利になる可能性があります。

特にFITからFIPへ移行する場合、基本的にはこれらのコストをバランシングコスト(初年度は1/kWh)で吸収できるか否かが移行を決める最大要因になりますが、市場高騰がある程度の頻度で生じるのであれば少々のマイナスコストは受け入れることが可能になります(先に公開された広域機関による「2021年度供給計画の取りまとめ」では2021年度および2022年度は電力需給が比較的タイトになるとの報告がなされています)。

また、5)を除くコストについては、一定のコストを支払ってアグリゲータに移転することも可能です。自社のリソースとFIP制度の下での収益性を考慮し、自社による直接売電かアグリゲータに売電するかを最終的に判断することになるかと思います。しかしながら、実際にこれらのコストを正確に見積もることは困難であり、また、相当の労力を要するものと推測されますので、一部の発電事業者を除いては先ずはアグリゲータに売電することを前提にFIP収益シミュレーションを行い、検討を進めるほうが効率的であろうと考えております。

※ゼックパワーではインバランスを極小化するため、各発電所の発電量を1分毎に取得しスポット市場における計画ずれを時間前市場で補正する運用を行います。これは各発電所の監視サイトへのアクセスもしくはスマートメータによる発電量取得機器を取り付けることで実現しますので、発電事業者様においてはこれに伴う対応費用が発生する可能性があります。

これまでに数社の事業者様からお問い合わせをいただき現在収益シミュレーションの準備に入っておりますが、更に種々の条件下にある発電スポットについて本邦FIP制度の下での経済的なリスク評価を蓄積してまいりたいと考えております。

ゼックパワーでは引き続きFIP収益シミュレーションを無料で提供しておりますので、ご興味がございましたらお気軽に下記までお問い合わせください。

—–

株式会社ZECPOWER(ゼックパワー)
〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-7-1八丁堀サンケイビル
担当:南/ 永井
TEL: 03-6280-3878   FAX: 03-6280-3879
お問合せフォームはこちら