7月14日に開催された電力・ガス基本政策小委員会において、事務局資料に以下の記載がありました。
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新設FIP電源または2022年度以降に営業運転開始となったFIT電源がFIP電源に移行した場合、発電事業者と需要家における非FIT非化石証書の直接取引を認めることとしてはどうか。
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各委員から反対意見もなかったので、このまま認められる方向で進んでいくものと感じられました。上記が実現した場合には、発電事業者・需要家ともにFIPを利用したバーチャルPPAも検討の俎上に乗ってくるのではないかと期待されます。
<メリット>
①既存の小売と需要家の電力供給契約に影響を及ぼさない。
②30分同時同量の制約から解放される。
→四半期毎に総発電量について、発電所から需要家へ非FIT非化石証書の受け渡しが行われる
③疑似的な物理電力の受け渡し(市場価格との値差を精算)まで実施するスキームでは、
・プレミアム支給分については実質的な電力価格の値下げ原資となり得る。
・長期契約を締結する場合、発電事業者においては電力販売の長期固定化、需要家においても購入 価格をある程度固定できる。
→小売と需要家との契約にも依存しますが、小売の電力販売価格が市場価格にある程度追随する と考えれば、需要家の負担は中長期的にほぼ一定となる。
④発電事業者にとって、非化石価値取引市場での未約定リスクを回避できる。
<デメリット>
①契約締結までの労力
・発電事業者・需要家の与信。
・発電電力量と需要電力量のマッチング。
・電力・非化石価値の価格や契約期間、精算方法等の取り決め。
②発電事業者の追加コスト
・市場へ発電事業者自らが直接売電する場合には、
-JEPXにおける各種費用
-OCCTOへの発電計画提出
-インバランス負担
-システム投資を含むオペレーション費用等
・アグリゲータへ委託する場合は、その費用
③需要家において、電力価格の精算まで行う場合、短期的には電力購入費用が増加する可能性がある(市場価格<ストライクプライスの場合)。
④発電電力量と需要電力量の差分に対する手当て(RE100等を目指す場合)
発電事業者と需要家が上記デメリットを許容できるのであれば、フィジカルPPAに比較して関係者の運用負担も軽いと想定されるため魅力は大きいと思われます。
現に諸外国では、日本の制度や環境と異なるところがあるとはいえ、コーポレートPPAにおいてはバーチャルPPAのシェアが高いようです。
また、自己託送を援用した再エネコーポレートPPAやFIT証書の需要家への開放等は制度設計から施行まで比較的短期に実現された印象なので、FIPを利用したバーチャルPPAも既に視野に入れて販売・調達計画を練ることも必要ではないでしょうか。