ZPコラム

ZPコラム vol.17 『FIP発電所への蓄電池併設とファイナンス』

政府目標である2030年再エネ比率36~38%2050年カーボンニュートラルに向けて、新規再エネの更なる導入や既存再エネの最大限の活用を進めることが重要とする一方で、目標達成への明確な道筋はいまだ見えず、課題が山積しているように思います。再エネの更なる普及に向けた促進策の一つとして、FITの後継と位置づけられるFIP制度が今年4月から始まりました。しかし、これまでのFIPの入札は不調で、直近の第12回太陽光入札(FIP)における落札容量は募集容量の10分の1にも満たない状況であったことは本メールニュースの前号でお伝えしたとおりです。この現状をどう打破していけばいいのでしょうか。

8月17日の経産省再エネ大量導入委において、再エネのさらなる導入に向けた考え方がいくつか示されました。電源については①適地への最大限の導入、②既存再エネの有効活用、及び③再エネの市場電源化・自立化が主な題目で、その中でFIP制度の推進に向けた蓄電池設置の促進、蓄電池事後設置ルール見直しによるFIP移行推進など、FIP発電所への蓄電池併設を推進する方向性が示されました。FIP発電所の建設においては、FITと異なり将来的な収入を正確に見通せないことからファイナンスをつけることが容易でないことが指摘されます。蓄電池を併設すれば、太陽光であれば市場価格の安い時間帯に充電し、高い時間帯に売電するピークシフトなども可能になり、収益性を改善する一助となる可能性があります。しかし高い導入・運用コストや複雑なオペレーションを要するなど高いハードルがあります。自家消費の太陽光発電設備に併設する蓄電池や、系統用蓄電所などに対しては補助金があるようですが、一般的な産業用太陽光発電所に蓄電池を導入するには、その採算性を含め難題がありそうです。

ところで、『株式会社脱炭素化支援機構』という脱炭素特化型官民ファンド機関の設立を環境省が9月14日に認可しました。この機関は「…民間企業等による意欲的な脱炭素事業への継続的・包括的な資金支援の一環として、前例に乏しい、認知度が低い等の理由から資金供給が難しい脱炭素事業活動に対する資金供給を行う…」ことが目的であり、FIP発電所建設や蓄電池導入も支援対象に含まれることが望まれます。

なお、近いうちに当ウェブサイト上で(株)ゼックが管理する6基の高圧太陽光発電所を対象に過去6ヶ月間のFIP収益シミュレーション結果を公表します。実際のJEPX市場価格に基づき正確に市場売電額などを計算し、プレミアム交付額や非化石価値取引市場での証書取引、アグリゲーター(ゼックパワー)への支払い額も考慮しており、実際のFIP発電所収入に近い結果になっています。おそらく他社ではまだ得られない情報だと思いますので、ぜひ当ウェブサイトを時々ご訪問いただけたらと思います。