ZPコラム

ZPコラム vol.11『高ボラティリティな今春の卸電力市場と最低価格0.01円/kWhの意義』

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から約2か月となる中で燃料価格が国際的に高騰しており、日本でも天然ガスは去年の同じ時期の3倍前後の水準で推移しています。一般の電気料金は高止まりしており、いわゆる新電力の事業者には新規申込みの停止や小売事業からの撤退を表明するところがあるなど大きな影響が及んでいます。

電力卸売市場(JEPX)においても高騰相場は継続し、今月(4/1-4/24)のシステムプライス平均価格は約17.2/kWhと昨年同月の7円程度と比べ大幅に高くなっています。そこには国際的な燃料価格高騰が影響していることは想像に難くありませんが、今春はさらに極端といえるほどボラティリティ(価格変動)が高くなっていることが特徴的です。ボラティリティの高い相場は今冬から続いており、特に夜間や雨、曇りの天気の時間帯に価格が高止まりする傾向が強くみられる一方で、日照が期待できる時間帯は最低価格の0.01/kWhに張り付く状況が頻発しています。特に週末の低需要となる時間帯で顕著に現れます。これは我が国で極端に偏重する太陽光発電の影響が著しく、高値から安値までの振れ幅が大きくなっていることを示すものといえます。

ところで、325日に開催された資源エネルギー庁「卸電力市場、需給調整市場及び系統運用の在り方勉強会」において、太陽光発電協会(JPEA)から、卸電力価格がマイナス価格になることを許容する場合のメリット・デメリットを検討してはどうか、という効果的な価格シグナルの在り方に向けた提言がありました。九州以外でも出力抑制が発生することが想定されるところ、出力抑制が発生しているエリア、時間帯でスポット価格が0.01/kWhになれば価格シグナルを発するが、需要側の行動変容は一部に留まっており、必ずしもその価格シグナルが効果的に働いていない可能性があるそうです。マイナス価格を許容する場合、需要側を含む行動変容がより効果的に喚起され太陽光の余剰電力がより活用され、結果的に出力抑制が減ることで全体最適が実現すると期待されるのではないかとしています。

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/oroshi_jukyu/pdf/003_08_00.pdf

また、下限価格0.01/kWhで売り入札を出しても余剰電力となってしまい約定するとは限らないという問題がすでに顕在化しており、この未約定リスクに対処する意味でもマイナス価格で売り入札するニーズが生まれるのかもしれません。