ZPコラム

ZPコラム vol.6 『追加性とFIPとコーポレートPPA』 [前編]

日本のFIP制度について経済産業省は、ポストFITの再エネ自立化へのステップとして市場原理を導入しながら投資インセンティブを確保する手法と紹介しています。その一方で、FIT・FIPの先にある市場とされるPPAへの関心が高まっているように感じられます。PPAを積極的に活用するのが米国の大企業などです。米国は日本と異なりFIT・FIP制度がなく、再エネ電力を調達する手段としてコーポレートPPAの活用が拡大しています。

日本でも今年9月Amazon社が三菱商事とPPAを締結し、2022-23年にかけて順次稼働する首都圏および東北地方の太陽光発電設備が発電する年間 23,000MWhの集約型太陽光発電プロジェクトを実施することが発表されました。コーポレートPPA を活用するケースとして日本初で最大とのことです。またオフサイトPPA を対象にした環境省の補助金交付事業なども行われています。

 Amazon社を含むGAFAなどと呼ばれる巨大企業等が調達する再エネ電力を選択するうえで重要な条件とされるのが追加性(additionality)です。新しい再エネ発電設備を増やし、その増加分で火力発電の電力を減らし、発電に伴うCO2排出量を削減する効果があるため気候危機を抑制する観点から効果的であるためです。証書を購入する方法は、すでに存在する発電設備が対象になるため、新たにCO2排出量を削減することにはつながらないという考え方が世界的にも主流になってきています。

太陽光や風力など再エネ発電設備を新設し、その電力を購入する企業はCO2排出量ゼロの電力として利用でき、火力発電の電力を代替できるため国全体のCO2 排出量は減少します。新設の発電所とコーポレートPPA を締結してその電力を購入すれば、追加性のある再エネ電力を長期的に調達できることになります。

日本でのPPA(バーチャルPPA・フィジカルPPA)はFIPを絡めて構築することも可能ですし、一方で自己託送という選択肢も出てきました。これらはいずれにせよ発電量予測やインバランス責任が発生することになりますが、追加性も含めこの続きは後編で述べさせていただきたいと思います。