ZPコラム

ZPコラム vol.25 『再エネの出力制御の現状』

『再エネの出力制御の現状』

2018年に九州で初めて実施された再エネの出力制御は、日本では特に太陽光発電の導入拡大とともに全国へ拡大しています。昨年来の電気料金高騰に伴う節約、節電要請などの影響による電力需要の減少もあり、出力制御量は増加傾向にあります。春秋の低需要期を中心に九州エリアでのみ実施されていましたが昨年以降、沖縄を含む他エリアに拡大し、未実施なのは東京エリアのみとなっています。その東京エリアでも、出力制御の実施はもう時間の問題とみられます。

全国の再エネの出力制御量の合計も増加傾向にあり、2018年度は約1億kWh(九州のみ)であったものが、2022年度は全国で約6億kWhに増加しました。九州エリアでは2022年度の実績で、最小需要718万kWに対し、再エネの導入量は1,216万kWと約1.7倍になっています。また北海道、東北、中部、中国、四国の5つのエリアにおいて、太陽光・風力の設備容量が軽負荷期の需要を上回っているそうです。

海外の出力制御率(太陽光と風力)との比較をみると、日本(九州)が3.0%であるのに対してイタリア1.1%、ドイツ3.3%、アイルランドが7.4%、またデンマークは8.2%などとなっており、出力制御を行うことは国際的に一般的という論調で語られています。但し、日本は制御対象の殆どが太陽光ですがドイツは約2割、デンマークは約5割が風力です。(出典:経産省 総合エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会/再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会第52回配布資料3、2023年6月21日)

再エネの出力制御は、社会的コスト全体を抑制しつつ、再エネの最大限の導入を進めるために必要な措置です。再エネの導入にあわせて系統増強等を行うと社会的コストが増大する面はあります。しかし出力制御が発生しないように再エネの導入を抑制するとなれば、本末転倒であり、発電費用ゼロの変動再エネの出力を制御することはそれ自体が社会的な損失で、もったいないことだと思います。

社会的コスト全体を抑制しつつ再エネの最大限の導入を進める上で、再エネの出力制御は必要である一方、必要最低限となるよう制度面を含む環境整備を進め、需給の変動に応じて適切に行われる必要があります。また効率性の観点からも、市場メカニズムをできる限り活用することなども必要です。

行政は、年内を目途に再エネの出力制御低減に向けた新たな対策パッケージを取りまとめる予定とのことです。関心を持って、みていきたいと思います。