日本では昨秋からの卸電力価格の高騰が続くなか、今年6月下旬に一部地域で「電力需給ひっ迫注意報」が発令され、依然として今夏の電力需給は厳しく、節電が広く呼びかけられています。今冬は例年よりさらに厳しい見通しが示されています。LNGの需要増と価格高騰、石炭・原油も価格高騰傾向であり、またウクライナ情勢の影響などによる電力価格の高騰は世界的なものとなっています。
しかし、それでも日本の昨秋以降の電力市場価格高騰は諸外国に比べれば相対的に低くとどまっており、弊社の一方の母体があるドイツを例示して比較するとそのことがおわかりいただけると思います。
日本 JEPXスポット月平均 (円/kWh) |
ドイツ及びルクセンブルク EPEX Spotmarkt月平均 (円/kWh) ※1ユーロ=135円で計算 |
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2021年8月 | 8.58 | 11.16 |
2021年9月 | 7.91 | 17.33 |
2021年10月 | 12.06 | 18.83 |
2021年11月 | 18.48 | 23.78 |
2021年12月 | 17.35 | 29.84 |
2022年1月 | 21.94 | 22.64 |
2022年2月 | 20.64 | 17.39 |
2022年3月 | 26.19 | 34.02 |
2022年4月 | 17.76 | 22.37 |
2022年5月 | 16.95 | 23.96 |
2022年6月 | 21.27 | 29.43 |
2022年7月 | 24.80 | 42.53 |
日本では2年前の冬の市場価格高騰などを踏まえ、価格高騰リスクをヘッジするための対策が諸々考えられてきました。電力市場価格は従前より燃料価格と強く相関することが知られており、ウクライナ情勢の悪化に伴いLNGなどの燃料価格のさらなる上昇が見込まれた2月28日の週以降、TOCOM電力先物の価格はすべての限月で高騰し、3月後半以降の今夏の価格は上昇しました。
一方のドイツですが、ご存知のとおりロシアからのLNG供給を絞られてしまうなど厳しいエネルギー事情に直面しており、3月以降の電力価格高騰は日本よりさらに激しいものとなっています。今月は日本で約26円/kWhに、ドイツでは50円/kWhを超える可能性があります。ドイツ連邦政府は、電力価格の高騰に苦しむ国民の負担を軽減するため、月に約5.03円/kWh(今年6月時点、3.723 ct/kWh)の負担を強いられていた再エネ賦課金の支払いを今年7月から免除しています。2022年の脱原発を標ぼうし、積極的に再エネ電力を導入してきたドイツですが、苦境に立たされているそのエネルギー戦略を今後どのように進めていくのでしょうか。