我々を取り巻く日本の電力業界は電力自由化と再エネ大量導入という二つの大きな課題を同時に遂行していこうという大変大きな転換点を迎えており、新たな電力政策が次から次へと打ち出されています。少し油断していると変化の波にのまれていくような状況にあるという事を感じておられる方が多数派ではないでしょうか。今回は今後の再エネに関する制度変更や需要家の動向を前提に再エネ発電事業者の視点で考えた場合にどのようなリスクが存在するのか、又その各リスクからどのような方策が考えられるのかをまとめてみました。2022年4月から始まるFIP制度や今後更に広まっていくであろうコーポレートPPA、そして自己託送の対象範囲の拡大等について、発電事業者の視点で考察を述べてみたいと思います。

<インバランスリスクについて>

FIPにせよPPAにせよ、FITと大きく異なるのは発電量予測とインバランス負担が発電事業者に課されることです。これには一定のコストが発生しますが、FIPについてはインバランスコストという名目で実質的にプレミアムに上乗せされます。PPAにおいては、当該コストは需要家への売電価格に内包されたものになります。

<与信リスク>

FIT、FIPにおいて、与信リスクは存在しませんが、PPAについては需要家毎に与信リスクが異なってきます。これを売電価格に反映できるかは需要家との交渉次第ですが、長期の与信リスクを正確に見積もることは相当困難であるため現実的には難しいのではないでしょうか。ただし、PPAの場合、他の需要家やJEPXおよび小売電気事業者等への供給先振替は適宜可能なため、その際のコストは発生するものの実質的な与信リスクはある程度減じられたものになると考えられます。更にFIPを組み合わせておけば、振替時にもプレミアムを受け取ることが可能ですのでリスク低減効果に与する手段と言えるのではないでしょうか。

<収益変動リスク>

FIPについてはFITに比べて収益変動が大きくなることは免れません(上振れの可能性もあり)。PPAについては、需要家との契約次第となりますが長期・固定価格での契約となることが一般的であると想定されますのでFITに近いと考えられます。

<需給一致(30分同時同量)>

FIT・FIPには存在しませんが、フィジカルPPAおよび自己託送においては制約事項となります。特に需要家の休業日や景気変動の影響等による電力需要低下時に発生する余剰電力をどのように取り扱うかは課題になりそうです。また、バーチャルPPAについても四半期ごとに非化石証書の受渡しを行うので、その面では緩やかな制約が存在しているとも言えそうです(当該四半期の発電量が電力需要を上回る場合、発電事業者がそのリスクを負担する可能性がある)。なお、直近の審議会から、非FIT非化石証書についても新設電源に限り需要家が直接購入できる方向で整理される模様です。なお、これもPPAにFIPを組み合わせておけば、余剰電力が発生する場合にも、市場もしくは小売電気事業者への売電収入に加えてプレミアムを受け取れますので一定のリスク抑制効果が期待できます。

<契約交渉・締結>

FIT・FIPは確立された手順を踏めば発電所を運開できるのに対し、PPAは需要家との交渉により基本的に個別契約となるのでやはり追加コストを要することは否めません。

以上のことを簡単に以下の表に纏めておきます。

インバランスリスク

与信リスク

収益変動リスク

需給一致

契約交渉・締結

FIT

なし

なし

不要

確立手順

FIP

あり

なし

不要

確立手順

V-PPA(FIP)

あり

あり

不要

個別交渉

P-PPA(FIP)

あり

あり

個別交渉 *1

自己託送

あり

あり

*2

個別交渉 *1

*1:小売電気事業者との連系が不可欠 *2:常に需要電力>供給電力を維持

これらの比較から、発電事業者(特に太陽光)の視点から見た場合、やはりFITが一番有力な選択肢となり得るでしょう。但し、今後は制度面から、中・大規模出力の太陽光発電所はFIP発電所に集約されていく方向です。一方で需要家から今後追加性のある非FIT電源への需要の高まりや市場高騰の影響により、新設電源については低廉化が進むFIT買取価格に比べその他の売電方法(上記表FIP以下)が収益面で有利となる可能性が大きいのではないでしょうか。上述の通り、PPAの場合には与信リスクや30分同時同量(フィジカルの場合)に保険的な意味からFIPを組み合わせることは有力な手段と我々は考えています。

ただ、ここでFIP電源における追加性の有無の判断が問題になります。

ゼックパワーでは、需要家と発電事業者が予めPPA契約を締結しその手段としてFIP電源を活用することは追加性があるとの見解に立っています(既に運開されたFIP電源でPPA契約を新たに締結するのは追加性なし)が、最終的な判断は需要家の考え方次第になるのではないでしょうか。

日本のFIP制度について経済産業省は、ポストFITの再エネ自立化へのステップとして市場原理を導入しながら投資インセンティブを確保する手法と紹介しています。その一方で、FIT・FIPの先にある市場とされるPPAへの関心が高まっているように感じられます。PPAを積極的に活用するのが米国の大企業などです。米国は日本と異なりFIT・FIP制度がなく、再エネ電力を調達する手段としてコーポレートPPAの活用が拡大しています。

日本でも今年9月Amazon社が三菱商事とPPAを締結し、2022-23年にかけて順次稼働する首都圏および東北地方の太陽光発電設備が発電する年間 23,000MWhの集約型太陽光発電プロジェクトを実施することが発表されました。コーポレートPPA を活用するケースとして日本初で最大とのことです。またオフサイトPPA を対象にした環境省の補助金交付事業なども行われています。

 Amazon社を含むGAFAなどと呼ばれる巨大企業等が調達する再エネ電力を選択するうえで重要な条件とされるのが追加性(additionality)です。新しい再エネ発電設備を増やし、その増加分で火力発電の電力を減らし、発電に伴うCO2排出量を削減する効果があるため気候危機を抑制する観点から効果的であるためです。証書を購入する方法は、すでに存在する発電設備が対象になるため、新たにCO2排出量を削減することにはつながらないという考え方が世界的にも主流になってきています。

太陽光や風力など再エネ発電設備を新設し、その電力を購入する企業はCO2排出量ゼロの電力として利用でき、火力発電の電力を代替できるため国全体のCO2 排出量は減少します。新設の発電所とコーポレートPPA を締結してその電力を購入すれば、追加性のある再エネ電力を長期的に調達できることになります。

日本でのPPA(バーチャルPPA・フィジカルPPA)はFIPを絡めて構築することも可能ですし、一方で自己託送という選択肢も出てきました。これらはいずれにせよ発電量予測やインバランス責任が発生することになりますが、追加性も含めこの続きは後編で述べさせていただきたいと思います。

平素は格別のお引き立てをいただき、厚くお礼申し上げます。
弊社では下記日程を夏季休業とさせていただきます。

● 夏季休業期間
2021年8月12日(木) ~ 8月16日(月)

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

本日より、ソーラージャーナル(アクセス・インターナショナル社)が主催する太陽光発電のオンライン展示会「SOLAR EXPO」に弊社ゼックパワーの紹介ページが掲載されましたのでお知らせいたします。

太陽光発電のオンライン展示会 -SOLAR EXPO-
https://expo.solarjournal.jp/
SOLAR EXPO 特別企画「FIPへの移行にどう備えるか?」
https://expo.solarjournal.jp/contents/FIPfestival/
SOLAR EXPO ゼックパワー ブース
https://expo.solarjournal.jp/booth/ZEC/

上記ページからも、お問い合わせや資料ダウンロードをしていただけるようになりました。
また当ウェブサイトや(株)ゼックのサイトにも引き続き、ご案内を掲載しております。
弊社ではFIP実証トライアルにご参加いただける事業者様を引き続き募集しておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

ゼックWebサイトの弊社実証トライアルご案内ページはこちら

日本版FIPの収益構造(3)

今回は前々回で予告しておりました「FIP制度に移行することにより新たに発生する費用」について考察したいと思いますが、その前に1点、前々回で触れた環境価値の価格について補足させて頂きます。

 前々回では参照価格の算定に用いられる同価値は直近4回の平均価格となるが、実際の市場における売却(約定)単価が相違する場合、収益が変動する可能性があると述べました。この点について経産省に確認したところ、平均価格の具体的な算出方法(前々回の例では小数点第二位を四捨五入)は今後議論されるとのことで、収益の変動は最小限に抑えられる可能性があることをご認識頂ければと思います。

 さて、それでは以下より今回の本題に入ります。私たちの考えるところ、FIT制度に比べFIP制度における発電事業者の新たに発生するコスト負担は主に以下になるものと考えています。

  • インバランスコスト
  • 気象・発電量予測コスト
  • JEPX関連費用または相対契約コスト
  • OCCTOへの発電計画提出コスト
  • 出力制御(オンライン制御)対応
  • システム構築・運用コスト

 上記個々の項目について、検討したいと思います。

1)インバランス負担

エリア毎の30分毎計画発電量と実発電量が異なった場合、30分コマ毎に確定したインバランス単価にもとづいてペナルティを支払わなければなりません。特に風力や太陽光などの変動電源は発電量予測が難しく、これら発電事業者にとってインバランスを最小化することは大きなハードルとなるでしょう。また、昨冬においてはインバランス単価も高騰が生じましたが、このようなリスク負担も新たに発生することになります。

2)気象・発電量予測コスト

インバランス最小化のため、一般的に気象予測あるいは発電量予測会社の情報を利用することになると思われますが、ドイツでは単体ではなく複数の会社と契約し予測精度を高める工夫がされています。

3)JEPX関連費用または相対契約コスト

発電した電力は市場または相対で売却することになりますが、ここで発生するコストは以下になります。

・JEPX関連費用
入会金(10 万円)、信認金(100 万円)、年会費(50 万円)、その他預託金・売買手数料
また、30分毎の取引単位は500kWhになりますのでこれと実発電量との過不足についてもコストとして認識する必要があります。

 ・相対契約コスト
相手先探索、契約交渉・更新、不随する手続きコスト → 主に人的コスト

4)OCCTOへの発電計画提出コスト

発電量予測に基づいて発電量計画の提出が必要になります。また、インバランス回避のため時間前市場で新たに売買した際は、修正した計画を期限までに再提出しなければなりません。

5)出力制御(オンライン制御)対応

FIP電源(FITからの移行も含めて)は系統混雑時において送配電事業者による出力制御対象となるため、オンライン制御機能を具備する必要があります。

6)システム構築・運用コスト

上述の2)、3)、4)については人力でも対応可能ですが、発電所の規模や数によってはシステムを導入したほうがコスト面や正確性といった点で有利になる可能性があります。

特にFITからFIPへ移行する場合、基本的にはこれらのコストをバランシングコスト(初年度は1/kWh)で吸収できるか否かが移行を決める最大要因になりますが、市場高騰がある程度の頻度で生じるのであれば少々のマイナスコストは受け入れることが可能になります(先に公開された広域機関による「2021年度供給計画の取りまとめ」では2021年度および2022年度は電力需給が比較的タイトになるとの報告がなされています)。

また、5)を除くコストについては、一定のコストを支払ってアグリゲータに移転することも可能です。自社のリソースとFIP制度の下での収益性を考慮し、自社による直接売電かアグリゲータに売電するかを最終的に判断することになるかと思います。しかしながら、実際にこれらのコストを正確に見積もることは困難であり、また、相当の労力を要するものと推測されますので、一部の発電事業者を除いては先ずはアグリゲータに売電することを前提にFIP収益シミュレーションを行い、検討を進めるほうが効率的であろうと考えております。

※ゼックパワーではインバランスを極小化するため、各発電所の発電量を1分毎に取得しスポット市場における計画ずれを時間前市場で補正する運用を行います。これは各発電所の監視サイトへのアクセスもしくはスマートメータによる発電量取得機器を取り付けることで実現しますので、発電事業者様においてはこれに伴う対応費用が発生する可能性があります。

これまでに数社の事業者様からお問い合わせをいただき現在収益シミュレーションの準備に入っておりますが、更に種々の条件下にある発電スポットについて本邦FIP制度の下での経済的なリスク評価を蓄積してまいりたいと考えております。

ゼックパワーでは引き続きFIP収益シミュレーションを無料で提供しておりますので、ご興味がございましたらお気軽に下記までお問い合わせください。

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株式会社ZECPOWER(ゼックパワー)
〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-7-1八丁堀サンケイビル
担当:南/ 永井
TEL: 03-6280-3878   FAX: 03-6280-3879
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日本版FIPの収益構造(2)

前回の終わりで、次回(今回)は「FIP制度に移行することにより新たに発生する費用」について述べたいと記載いたしましたが、費用部分のお話は次回に回させていただきます。ここではFIP制度の根幹部分の内容が2021226日に経済産業省においてとりまとめがありましたので、ここではそれを先に共有したいと思います。内容は盛りだくさんですのでここでは発電事業者の収益に関連しそうなFIP制度内容の要点のみを記載したいと思っております。これまでの記載とかぶる部分もありますがご了承ください。

 

要点1 → 環境価値の売却がFIP発電事業者は可能になりました。 

FIT発電所のもとでは、環境価値は国民の支援を受けているという整理のもと、発電事業者側にはないという事になっておりました。ところがFIP電源に関しては環境価値は発電事業者側に残し、それを市場又は相対で売却できるという事になりました。つまり環境価値は発電事業者がその努力によって高く売れば売るほど収益状況がよくなる仕組みになっています。

FIP電源の環境価値=非FIT電源の環境価値

 

◆要点2 FIP電源は下げ調整力として利用する事が可能になりました。

来年度導入予定の需給調整市場においてFIP電源の下げ調整として利用できるようになります。需給調整市場は送配電事業者の執り行う入札によって募集することになります。そのまま売電した方がいいのか、需給調整市場で入札した方がいいのかを選択することになります。売却する選択肢が増えるという面ではメリットと言えるかもしれませんが変動電源(太陽光、風力)のみを対象とする場合は効果は限定的でしょう。

 

◆要点3 → FIPプレミアム(市場プレミアム)とは別のプレミアムがつく。

 FIP制度下では発電量の予測をし、計画発電量を広域機関に届け出を行いますがそのバランシングコスト名目として1/KWh(毎年漸減)を新たな収入源として受領することができます。もちろんこの中から実際のバランシングコスト分の負担が生じますが、それを最小限にとどめる事でFITにはない新たな収入源を確保する事が可能です。これはとても大きな収入アップの要因です。

 

◆要点4 → 中規模新規FIP電源は入札ではない。 

新規FIT電源の設備認定取得において250KW以上は入札によって新規買取価格が決まるがFIP電源では定格出力2501000KWの範囲内であれば、入札ではなくFIP価格が固定されています。これは認定を取る上において大きなアドバンテージになるのではないかと思います。入札に比べてFIP価格を高く設定できる可能性が大きくなるという面では収益最大化に寄与すると言えるでしょう。

 

◆要点5 → 事後的な蓄電池併設可能、買取価格は不変 

2022年度以降の認定FIP発電所については、パワコンよりパネル側の蓄電池新増設を基準価格の変更なしに認める。これはFIT時代には認められていなかったものでFIP電源の優位な部分であると思います。2022年から直ちに蓄電池をつけるという案件も少ないと思われますが蓄電池の投入が一般化した時には大きな収益をもたらすことが想像できます。

 

以上、FITからFIPに移行することによって何がどう変わるのかを説明いたしました。FIT制度下では国の制度の中で身動きを取れないくらいがんじがらめに規則で縛られていた発電所でありましたが、しかし決まった固定価格での収入がほぼ保証されていた発電所というイメージがありました。一方FITからFIPに移行することによって発電事業としての当たり前の義務は課されるものの、環境価値や管理プレミアム、一部発電規模での非入札方式であったり、将来的には蓄電池増設による収入アップが図れる等制度の柔軟性が飛躍的に高まっているのではないかと思います。FITという固定された収益をただ受け取るだけの世界から、発電事業者としての責任と義務を全うし、自らの努力次第で収益を増加させることが可能になるFIPを選択するか、電力自由化の真っただ中にある我々にとってどの道を選ぶかはこれからの大きな課題だと思うのです。それでは上で述べた努力次第の努力っていうのは何かという事です。

それはFIPで課された当たり前の義務を如何に低コストで仕上げていく事ができるかに尽きるのだと思います。これまで述べてきたようにFIP発電事業者には毎日の発電量報告が義務化され、それによるインバランス負担を求められるようになります。これを如何に低コストで遂行できるかに尽きるのです。株式会社ゼックパワーではドイツインパワー社の15年に及ぶこれまでのドイツでの実績を背景としたVPPシステムを構築しており現在も日本FIP仕様への改変作業を進めています。

FITからFIP電源に移行した際に、収益がどのように変わるのかがわかるような、過去の発電量をもとにシミュレーション(試算)するサービスを提供する予定です。興味のある事業者様は是非お問い合わせください、無料で試算いたします。

 

株式会社ZECPOWER(ゼックパワー)
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日本版FIPの収益構造(1)

2021年2月16日の資源エネルギー庁審議会において日本版FIPの方向性が概ね決定しました。
今回はFIP制度の主に収益設計についてその概要を説明し、簡易モデル発電所のFIP収入を想定しました。

以下は2022年4月1日から施行されるFIP制度の認定を受けた発電事業者の収入概念図になります。


※経産省「エネルギー供給強靱化法に盛り込まれた再エネ特措法改正法 に係る詳細設計(案)」より抜粋

交付期間:20年(FIT制度からFIP制度に移行する場合はFIT調達期間の残余期間)
精算単位(市場参照期間):1カ月
① 基準価格(FIP価格):入札(FIT制度からFIP制度に移行する場合はFIT価格)
② 参照価格:卸電力取引市場の参照価格(3)+ 環境価値(5)- バランシングコスト(6)
③ プレミアム単価(調整後):(①-②)+ 出力制御コマ調整(4)

<各項の説明>
  • 市場参照価格(3)
    1. 同一エリア内の風力発電所の供給実績とスポット市場価格(エリアプライス)と時間
      前市場価格の加重平均から算出される前年度年間平均市場価格に月間補正を施し当月の参照価格が決定する。
  • 環境価値(5)
    1. 直近4回の非化石価値取引市場(非FIT再エネ指定)の平均価格。現状 1.2円/kWh。
  • バランシングコスト(6)
    1. 2022年度に1.0円/kWhから始まり年度毎に漸減される(以下参照)。
  • 出力制御コマ調整
    1. エリアプライスが0.01円/kWhとなるコマではプレミアムは交付されず、それ以外のコマに配分される。


※経産省「エネルギー供給強靱化法に盛り込まれた再エネ特措法改正法 に係る詳細設計(案)」より抜粋

次に具体的に簡易モデルを使ってFIPの収入について説明します。

<想定風力発電所の諸元>

<プレミアム単価の算定>

<当月キャッシュの収入>

環境価値は非化石価値取引市場で売却されますが以下のスケジュールで実施されますのでこの分の収入はかなり遅れることになります。

※経産省「エネルギー供給強靱化法に盛り込まれた再エネ特措法改正法 に係る詳細設計(案)」より抜粋

また、上記の環境価値は直前4回の平均なので上記環境価値と実際の売却単価が異なる可能性があります。例えば、以下の約定価格のパターンが繰り返される場合、環境価値(参照価格に加算される単価)は常に1.2円/kWhとなりますが、実際の7~9月の環境価値は1.1円/kWhで売却されることになります。

これらの条件でFIP発電所の年間収入は以下のようになります。

以上より年間発電量に対する総収入は46,063,000円(税抜)となり、バランシングコストの積上効果によりFIT売電とした場合の収入43,800,000(同)を上回る結果となります。

次回はFIP制度に移行することにより新たに発生する費用について考察したいと思います。

引き続きFIPの実証トライアル(収益試算など)にご参加いただける風力発電事業者様を募集しております、もちろん無料です。ご興味のある事業者様は、お気軽に下記までご一報いただけたらと思います。


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FITよりFIPの方が儲かる理由(3)

コロナ禍の中、再び首都圏に緊急事態宣言が発令されましたが、皆様には良い新年をお迎えいただいている事を祈念いたします。前回、12月下旬にお送りしたFITよりFIPの方が儲かる理由(2)では、ドイツの風力発電所はFITよりFIPの方が収益性において高くなった発電所がほとんどであった事、またFIP発電所には管理プレミアムという、市場プレミアムとは別のプレミアムが付くことにより発電事業者の収益性向上を促す制度であることもお伝えしました。日本において現在のエネ庁審議会の議論では、ほぼドイツと同じ方向で制度設計が進められる事が確認されています。

前回、FIP収益性向上を図る際に重要な事が、当該発電所が平均的な発電所以上の発電所かどうかという指標について述べました。この概念は非常に理解しにくいところですので少し補足したいと思います。夏冬および朝夕にように市場価格の高い時期・時間帯に多く発電する発電所は収益性が高くなる(平均以上の発電所)という具体的な根拠を以下に説明いたします。

  1. ① 時期(季節変動)の観点
    現在、以下の算出式でFIP参照価格を決定する方向で審議が進められております。
     当月の参照価格(円/kWh) = 前年度年間平均市場価格(円/kWh)+(当年度月間平均市場価格(円/kWh)-前年度月間平均市場価格(円/kWh)
     当月の調整前プレミアム単価(円/kWh)※= FIP基準価格(円/kWh)-当月の参照価格(円/kWh)
    ※ここで言及しませんが、バランシングコストや環境価値相当額も考慮して最終的なプレミアム単価が決定されます

     この意味するところは、当月の参照価格は同一アエリア内の風力発電所から前年1年間に売電された平均市場価格をベースに年度毎の月別変動要因を加味して算出するというものです。
    この考え方の特徴は、季節ごとの市場価格変動にかかわらずプレミアム額のベース部分の基準は年間を通じて固定されるため(前年・当年度の月毎の価格変動幅については月別の総収入が一定になる方向で調整される)、市場価格が高い時期に売電をするインセンティブが働く、というものです。
    現時点では、風力発電所は出たなりで系統に電力を流すことが現実的なので、夏冬の発電電力量の割合が他に比べ相対的に大きい発電所はFITよりもFIPを利用するほうが収益性は高くなることが想定されます。

  2. ② 時間変動の観点
    ①で算出されたプレミアム単価に1カ月の総発電量を乗じた額がプレミアムとして支給されますので、1カ月の稼働率を一定とした場合、プレミアム受給額は同じですが朝夕の市場価格が高騰する時間帯に市場売却量の多い発電所の方が総収入は増えることになります。
  3. ③ 市場スパイクの観点
    ここでいう市場スパイクとはFIP価格を上回る市場価格を指しますが、これを上回るコマにおいて発電量が多いほど収益性は高まります。あまりにスパイクが頻発すると翌年の参照価格が上昇しプレミアムが低下することが考えられますが、一般的に上記①、②を満たす発電所は市場スパイクに遭遇する確率が高く、更に収益性が高まることが予想されます。
    逆に言えば、不需要期の稼働率が高く且つ朝夕の稼働率が低い風力発電所においてはFIPよりもFITを選択するほうが有利と言えますが、パランシングコストや環境価値相当額を加味して総合的に検討する必要があります。

なお、将来的には洋上風力の大量導入や原発再稼働により中長期的には市場環境が変わる可能性があります。しかし電力の需要期(夏冬)・不需要期(春秋)がある事や、再エネの80%以上が太陽光発電である事から、太陽光の発電量に大きく影響を受ける市場環境は当面継続するものと思われます。FIPへの移行を検討する際には過去の発電データを用いて事前の収益シミュレーションを行い、自社発電所の傾向を把握することが非常に重要な作業となります。

改めて、ではありますが、株式会社ゼックパワーはドイツにおける10年にわたるFIPアグリゲート事業で培ってきたVPPシステムを日本仕様にアレンジする作業を現在進めております。予定では今年3月末までに過去の実績をもとに上記収益シミュレーションが無料で行える状態になりますので、是非自社の発電所の収益性向上のため、FIP制度に移行すべきかどうかの判断材料としてご利用いただければ幸いです。お問い合わせいただければ準備資料をお送りいたします。

私どもは、FIP制度の本質は持続可能性だと思っております。制度期間20年が終わってもしっかりと再エネ電力を供給することにより収益力のある発電所として存続するための登竜門だと思っております。そういう意味で、FITからFIPへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。

FIPの実証トライアル(収益試算など)にご参加いただける風力発電事業者様を募集しております、 もちろん無料です。

ご興味のある事業者様は、お気軽に下記までご一報いただけたらと思います。


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FITよりFIPの方が儲かる理由(2)

コロナ禍による影響が前回「FITよりFIPの方が儲かる理由(1)」を発出した11月10日に比べて大きくなってまいりましたが、お変わりないことを祈ります。
1回目に続いて本日が2回目になりますが、続編をお伝えいたします。

前回の最後の部分だけ少しおさらいですが、日本のFIP制度はドイツのFIP制度と同じような方向を向いているという事はこれまでの政府の審議会の内容からほぼ間違いはないと思われます。ドイツでは2012年からFIP制度を入れましたが、既存発電所はFIT,FIPのどちらの制度を選択してもよく、おまけにFIT発電所がFIPに移行しても収益が不調なら再度FITに戻れるという柔軟性を有した制度になっています。にもかかわらず10年近くが経過した現段階でも風力事業者のほとんどがFIPを選択しているという事です。これは言うまでもなくFIPを選択した発電事業者がFITを継続するより明らかに儲かっているという事を示しています。

ではなぜドイツではFIPの方が収益はよくなるのでしょうか。原理としては非常に単純なのです。下記(ⅰ)図をご覧ください。

FIPの収益を計算する際には参照価格というものを使用します。

例えば東京電力管内で言えば卸電力市場(JEPX)で売却された風力発電の当月月間の平均価格がこれに当たります。この価格は単なる価格の平均値ではなく、30分毎に売れた電力量を加味した価格平均(加重平均)なので、わかりやすく言えば東京電力管内の平均的な発電所での販売価格という事になります。

仮に参照価格が7円だったとすると、FIPの価格(例12円)との差がプレミアムの5円という事になります。
この平均的な発電所に対して例えば夏冬や朝晩のように市場価格の高い時期に多く発電する発電所は月間の平均価格が高くなります。

平均的な発電所の市場販売価格(≒参照価格)7円に対し、平均7.5円で販売できた発電所があった場合、プレミアムの5円を足した12.5円に売電量をかけたものがその発電所の収入になるわけです。年間を通じて平均的な発電所より収入が高い発電所はFIP制度のなかで価値の高い発電所として扱われます。

しかしこれだけだと平均以上の発電所しかFIT以上の収益になりません。当然FIPの方が儲かる理由の要素は他にもあります。

ドイツではこのFIP制度が始まるときにFIPのプレミアム以外にもう一つ管理プレミアムというものを付加しました。これはそれまでFIT発電事業者は特例で発電量報告義務が免除されていたために、インバランス負担等の調整コストを負う事はありませんでした。FIP事業者は自らPVや風力発電所の発電量を予測報告し、そのインバランス負担を負う事になります。

その予測費用やインバランス費用名目で管理プレミアム(以下、管理P)というものを発電事業者に支給しました。当初日本円にして1.5円/KWh程度です。
先ほどの固有発電所の計算例で言えば、
     固有発電所売電価格7.5円+プレミアム5円+管理P1.5円=14円(ⅱ)図参照

FIPのプレミアムだけでは平均的な発電所以上の発電所がFITより儲かる対象であったものが、この管理Pをプラスする事で更に平均的発電所以下の発電所でもFIPの恩恵によりFIT収入より大きな収入を得られる確率が高くなったわけです。

もちろん管理Pは得られますが予測やインバランス負担のような管理経費が増えるので、その分はマイナスとして考える必要はあります。

いずれにせよドイツのFIP制度は発電事業者にとってFIT以上の恩恵を与えた事になり、特に太陽光発電事業者より発電効率の高い風力事業者の90%がFIPを選択しています。
(前回(1)では風力事業者の80%としていましたが直近のデータでは90%でした。)

太陽光発電事業に比して風力事業の割合が多いという理由はやはり相対的に風力事業の方が発電規模が大きく稼働率が約2倍と発電量も多い事から、付帯設備コストを勘案すればお得感が得られるという事なのでしょう。

この事からFIPにおいては相対的に太陽光発電に比べて風力発電事業の方が、又FITよりもFIPの方が収益性は良くなる確率が高いという事が大枠で理解いただけたのではないでしょうか。
ではそもそもFIP収益を判断する上において重要な平均以上の発電所ってどのように判断するのでしょうか。それは又次回書かせていただこうと思います。

今回は主にドイツにおけるFIPの収益構造について述べてみました。

ゼックパワーでは、FIPにおける収益計算シミュレーション(試算)や発電量予測の実証トライアルを進めており、ご参加いただける風力発電事業者様を募集しております。ご参加は無料です。ご興味のある事業者様は、お気軽に下記までご一報いただけたらと思います。


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FITよりFIPの方が儲かる理由(1)

弊社は、2022年度から導入が予定されているフィード・イン・プレミアム(FIP)制度を利用し、アグリゲーターとして太陽光発電と風力発電による再エネ電力を日本卸電力取引所へ直接販売する業務を行う事を計画しております。FIP制度はFIT制度で運用している発電事業者様にとって決して関係のない話ではありません。

今後3回に分けて風力発電事業者の皆様に、弊社がこの4年間ドイツで見てきたFIP制度の運用と収益構造について情報提供をさせていただこうと思っております。これまでの国の審議会の議論内容からはどうやら日本はドイツ方式を採用するようです。FIPの儲かる理由、ご興味ございましたら是非お読みいただければと思います。

既にご存知の方もいらっしゃると思われますが、ドイツにおいてはこのFIP制度は2012年から始まっておりまして、日本は10年遅れての制度導入となります。

[FITとFIPの決定的な違い]
  1. 下図左側のFIT制度の収益は市場価格平均(黃色)がいくらで推移しようともFIT価格(赤色点線)を必ず得る事が出来、総収益は下段の赤色の太線で囲まれた面積=A1になります。
  2. 下図右側のFIP制度の収益は市場価格平均(青色点線)とFIP価格(赤色点線)との差額が固定プレミアムとして交付され、その金額(下段両矢印)にコマ毎の市場売却代金を加えた収益の合計が赤の太線で囲まれた面積=A2になります。

図 FIT制度とFIP制度の違い(出所:資源エネルギー庁の資料を元に弊社作成)

つまりFIT収益とFIP収益を比較するという事は赤で囲まれたA1の面積とA2の面積の比較という事になります。 A1<A2であればFIPの方が収益はよくなるという事ですね。繰り返しになりますが、

FIP収益=市場平均価格(変動)+プレミアム価格(固定)  という事になります。

FIP収益を大きくしようとすれば固定であるプレミアムは変えようがないので、コマごとの市場売電価格を如何に上げるかがキーポイントです。

[FITに比べて変動型のFIPは不利?]

固定価格で買い取ってもらう事と卸市場の変動価格に連動する形で買い取ってもらう事とでは、何がどう変わってくるのでしょうか。当たり前のことですが固定価格の方が安定した収益が見込める事は確かではありますが、固定価格以上の収益はどうあがいても得られません。

一方変動価格では逆に固定価格以上の収益を得られるときもあれば市場価格次第では固定価格より低い価格の収益になってしまう場合もあります。

貴方ならどちらがいいのでしょうか。うーんやっぱり固定価格の方が安心だなという事になりませんか。私ならそう思います。

[ドイツではFIPを選択する事業者が圧倒的に多い]

そこで2012年からFIP制度を導入しているドイツでは10年近くが経過した今、FIP制度を選択している事業者がどれくらいいるのか調べてみました。なんと風力発電事業者の8割が変動型収益構造のFIP制度を選んでいるというのです。これには驚きました。ドイツは既存事業者つまりFIP制度開始時点において既に導入されている発電所はFIT又はFIP制度どちらも選択可能になっています。

おまけに一旦FIP制度を選択したとしても収益が固定価格より少ないという事になればいつでもFIT制度に戻れるという事になっています。にもかかわらずFIP制度開始から10年たった今、先ほど申し上げたように大多数の風力発電所がFIPに移行している状況なのです。一体なぜだと思いますか。

固定価格買取という安定した収益よりも、FIPの方が収益状況はいいという事なのか?

その理由は次回以降に述べさせていただきたいと思います。

※ FIPに移行した場合の収益計算が可能

株式会社ゼックではドイツのFIPアグリゲーターであるin.power(インパワー)社と今年1月に株式会社ゼックパワーという合弁会社を設立しました。インパワー社はドイツにおいて10年以上のアグリゲーター経験を有し、現在約1.2GWの発電所をアグリゲートしております。2022年の日本におけるFIP導入に際してインパワー社が運用するVPPシステムを2021年3月末日までに導入すべく、準備をしております。システム導入後、御社の発電所がFIPに移行した場合の収益状況を仮に試算する事が可能になります。

このトライアルにご参加いただける事業者様を募集しております。トライアル試算は無料です。

ご興味のある事業者様は、お気軽に下記までご一報いただけたらと思います。


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